ダイハツムーヴをはじめとする、軽自動車の利点は何といっても維持費の安さではないでしょうか。しかし維持費が安いからといって消耗品まで安物を使う、特にエンジンオイルに関してただ安く済ませようとするなら、かえって車をダメにしてしまい高くつく結果になりかねません。
なぜなら、軽自動車は普通車以上にエンジンに負担がかかっているからなんです。
今回の記事では、軽自動車と普通車のエンジンにかかる負荷の比較と、なぜムーヴのオイル交換には化学合成油が良いのか? どんなオイルがお勧めかについて特集しています。是非参考になさってください。
2級自動車整備士として約20年に渡り、車に関わってきた者としての観点で情報をお伝えします。私自身まだまだ勉強すべき事が沢山ありますが、参考にしていただければ幸いです。
- ムーヴに乗っている
- どんなエンジンオイルを買おうか迷っている
- 車を長く大切に乗りたいと思っている
普通車と比べ高回転域を使用
軽自動車のエンジン660ccという限られた排気量では、普通車と比べどうしても高回転域を使用することになります。
ムーヴのエンジン等のスペックを見てみますと、高回転型であることが良く分かります。
エンジン | LA100 ムーヴ(NA) | |
型式/気筒数 | KF型 /水冷直列3気筒 | |
出力kw(ps)/rpm | 38[52]/ 6.800 | |
トルクN.m(kg.m)/rpm | 60[6.1]/ 5.200 | |
燃費向上対策 | アイドリングストップ装置(全グレード標準装備) | |
トランスミッション | 無段変速機(CVT) |
上記の表を見ると、最高出力は6.800回転で、最大トルクは5.200回転で出ていて、高回転域で力を発揮する特性である事が分かります。
もちろん、常に最大パワーを必要とするわけではありませんが、特にノンターボのムーヴは非力な部類であり、低回転域の使用だけではどうしても限界があります。
信号停止からの発進や、2人以上の乗車、坂道などではどうしても力を必要とし必然的に回転数が上がってしまいます。
では、実際にどれほどの回転差が生じているのでしょうか?
以下にダイハツムーヴと普通車(トヨタハリヤー)の高速100km/hでの走行時の、回転数の差を数値化してみました。
例 | アイドリング時回転数 | 100km/h時回転数 |
ムーヴ(LA100) | 850~1000rpm | 3260rpm |
ハリヤー(30系) | 600~700rpm | 2330rpm |
回転差 | 250~300rpm | 930rpm |
1時間あたりの差 | 15000~18000回転 | 55800回転 |
- LA100のムーヴのエンジンの点検時は900rpm(+100,-50)
- 30系ハリヤーの点検時正常範囲は650rpm(±50)
さらに、アイドリング時、40km/h,60km/h,100km/hでの走行時の回転数の比較も表にまとめてみました。
(エンジン回転の計算はこちらのブログを参考にさせていただきました)
軽自動車と普通車ではアイドリング時には1.6倍の差、また1時間だけでも最大で1万8千回転もの差が出てしまうことがお分かりいただけると思います。
100km/hでの走行時には、約1.4倍の差、回転数にして5万6千回転の差になってしまいます。
- 少なくとも平均して軽自動車のエンジンは普通車の1.5倍も酷使されている事になります。
- つまり、同じ年数、同じ年間走行距離であったとしても、エンジンは普通車以上に回転し、消耗しているのです。
上記の計算では、CVT、ATの違いもあり負荷によって回転数も変化しますのめ目安として考えることが出来ますが、定速走行での計算となることを考えるとさらに回転数の差は大きくなってしまうと言えます。
つまり、一定のスピードで走っている分には、エンジンにとってそれほど負担はかかることはありません
しかし、0km→40kmまで加速するためにはエンジンにとって大きな負荷がかかり、660ccの小さなエンジンでは必要なパワーを絞り出すために回転数を上げて、出力を補う事になります。
この点を考えても、パワー差で劣る軽自動車はエンジンへの負担がより大きくなってしまうのです。
アイドリングストップ機能の代償
- アイドリングストップ時にはオイルの供給が停止しすることで、再スタート時にエンジンの摩耗が起こり易い
ムーヴには全車に燃費向上、環境の観点から信号待ちなどでエンジンをストップさせるアイドリングストップ機能が搭載されています。
不要なアイドリングをストップさせ、エンジンを休ませることもでき、燃費の向上も計れるので「良い事づくめ」だと思ったら実は大間違い!
エンジンにとっては過酷な環境になってしまうんです。
信号待ちなどでエンジンが停止すると、内部にエンジンオイルは供給されず、エンジンオイルは重力で落ちて、オイルパンへと戻ってしまいます。
この状態から、エンジンが再始動されると“ドライスタート”と呼ばれる油膜切れを起こす現象が生じやすくなってしまい、エンジン摩耗が促進されてしまいます。
ハイブリッド車も同様の現象が生じます。(こちらの記事を参考)
しかも、信号待ちから一気に加速する事になれば、アイドリング時よりも高い回転数まで急上昇する事になり、十分にオイルが行き渡っていない状況下であれば尚の事、エンジンにダメージを与えやすくなってしまうのです。
合成油でエンジンをダメージから守る
軽自動車は特に、①高回転での使用による酷使や、②アイドリングストップによるエンジンへのダメージから保護する必要があります。
そこで、特に有効なのが合成油と呼ばれるエンジンオイルです。
※合成油や化学合成油といった表現がありますが基本的に同じグループです。
2つの理由により、合成オイルをお勧めしています。
※合成油や化学合成油と表現されるオイルについてどういったオイルなのかについて詳しくは以下の記事を参考になさってください
粘度指数が高い
合成油はオイル粘度指数(VI)が高く粘度変化が少ないので、高回転で高温になったり、アイドリングストップで油温が冷えたりを繰り返す軽自動車のエンジンに向いています
オイルは温度が高いと柔らかくなり、逆に温度が低いと硬くなってしまいこれでは油膜切れを起こしやすくなったり、寒いとエンジンの始動性が悪くなってしまいます。
それでエンジンオイルの理想はと言いますと、どんな温度でも粘度の変化が少ないことを理想とします。
この粘度変化を数値で表したものを粘度指数(VI)といい数値が大きいほど粘度変化の少ないエンジンオイルに適したベースオイルとなります。
油膜保持力が高い
アイドリングストップ車には、油膜の保持力が高い、ハイブリッド用エンジンオイルがお勧め
アイドリングストップ時にはオイルの供給が停止しすることで、再スタート時にエンジンの摩耗が起こり易いということでしたが
走行中でさえエンジンストップするハイブリット車のエンジンは更に過酷な環境にさらされていると言えます。
ハイブリッド車用のエンジンオイルは、そうした過酷な状況でもエンジンを保護できるよう、ベースオイルや添加剤が調合されていますので、アイドリングストップ機能が搭載されている軽自動車にもハイブリッド用エンジンオイルを入れておくならダメージからエンジンを守ることが出来ます。
ムーヴにおすすめのエンジンオイル
耐摩耗性や油膜の保持力を考慮し、ムーヴにおすすめのエンジンオイルを3つに絞ってみました。
オススメポイント | GULFのハイブリッド専用エンジンオイルには“コンプレックスエステル”がベースオイルに採用されており、このオイルの特徴とて、分子構造にマイナスの極性を持つ分子を有するため、金属摺動面に吸着する性質がある。つまりオイルが磁石のように金属面にくっ付いて油膜を保つ為、ドライスタート時や、高負荷時にも油膜切れしにくく、優れた潤滑性を持つことができるようになっています。 |
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ベースオイル | 部分合成油 VHVI |
API | |
4L缶 | △ |
20L缶 | ○ |
コスパ |
オススメポイント | MAGNATEC Hybridは、インテリジェント分子が磁石のようにエンジン内に吸着し強力な保護膜を形成します。加えて、ベースオイルに低温流動性に優れた全合成油を採用することで、エンジン始動時は勿論、エンジンオイルの温度が低い状態の走行においても、エンジン内部の金属面の摩耗を劇的に抑制し、エンジンを確実に保護します。従って、エンジンを長時間にわたって良いコンディションに維持することができます。 |
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ベースオイル | 全合成油 |
API | SP |
4L缶 | ○ |
20L缶 | ○ |
コスパ |
オススメポイント | 日本のオイルメーカーで、2013年から販売を開始いしています。モータースポーツSUPER GTにも積極的に参加しレース活動からのフィードバックにより継続的な研究開発を確立さらなる品質改善への努力が払われています。こちらの商品ベースオイルにVHVIにPAOが配合された化学合成油となって基本特性が高く、良好な始動性と省燃費性を確保しつつも、強靭な油膜性能、潤滑性能を発揮します。 |
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ベースオイル | 100%化学合成油(PAO+HIVI) |
API | SP |
4L缶 | ○ |
20L缶 | ○ |
コスパ |